再び戦争をさせない千葉県1000人委員会

2016.10.4 「10.4憲法講演会」-私たちの憲法について考える-開催

■200人参加、熱気あふれる会場
  10月4 日、千葉市中央区に於いて、「再び戦争をさせない千葉県1000人委員会」(以降、1000人委員会)は、「10.4憲法講演会」を開催しました。 さきの参議院選挙では安倍政権・与党が議会で憲法改「正」にも踏み切りうる3分の2以上もの議席を占めたことで、人々も意気消沈しているのではないかとの懸念を吹き消してくれるように、会場は約200人が集い、超満員で熱気あふれる議論も交わされました。

■講師 木村草太さんの講演
 木村草太さんは、第一線の憲法学者で、多数の著作だけでなく、テレビの解説等でも鋭い論陣を展開している若手論客です。参加者の多くもこのことを知っており、直接お話しを聞いてみたいとかけつけてくれた方も多かったと思います。
  木村さんは、まずは、現行憲法の成立過程から論を進め、確かに、その過程は日本側が自ら基本を最初に提起したというわけではなかったという意味で、「なさけない過程」であるとした上で、しかし、そのことで「押しつけられた憲法だからだめだ」という手続き主義的な批判は、内容的なものではないと提起しました。
 そして、そもそも日本が受諾したポツダム宣言が民主主義の復活強化、基本的人権の尊重の確立、を条件にしていたことをうけとめたもので、また日本が1928年に批准していたパリの不戦条約をふまえたものとしての平和主義でもあったという内容を中心に議論すべきだとしました。
 1946年(昭和21年3月)からの憲法改正草案要綱から8ヶ月をかけ、帝国議会選挙(6月) を経て、衆院可決、貴族院可決、枢密院可決という手続きを経た上で公布された経緯もありました。
  また、憲法9条の国家による武力行使統制について、第1項は、「国際紛争解決のための」武力行使を制限している、第2項は、「戦力」一般を持てないのだから、武力行使一般が禁じられる、というのが従来の政府見解の主流であったと(2014 年7月閣議決定でも「憲法第9条は」「国際関係における『武力の行使』を一切禁じているようにみえる」としています 。
 それならば、そもそも自衛隊や個別自衛権について憲法上それを認める根拠はあるのかについては、憲法13条が、政府に対して国内の安全(国民の生命・自由・幸福・追求の権利)を保護する義務を課しています。
 これは個別自衛権・自衛隊合憲説の根拠と理解されています(自衛隊法にはこの「国民の幸福追求」の条項が入っている) 。
 ただし、国内防衛作用については「行政」(警察権) の範囲に含まれます。他国の防衛について、例外を許容した条文は存在しないとみるしかなく、今回の安保関連法の集団的自衛権、国連軍参加は憲法違反といわざるをえないと指摘しました。
  憲法9条改正について、「改正に反対だ」が39% 、「改正して、自衛隊の役割や限界を明記すべきだ」38% で、自民等憲法草案のような「改正して、自衛隊を他国同様の『国防軍』にすべきだ」はわずか8%でしかないと世論(毎日新聞2016年7月調査) についても触れました。
  それなのに、政府・自民党は憲法改正を自己目的化してゆく懸念があるとしました。ことに自民草案にある「第9章緊急事態」条項は、緊急事態の宣言で、政令により、国民の人権まで制約しうる危険性があり大変に問題と警告を鳴らしました。
  また、普天間からの移転といわれるが、辺野古の基地移転は、事実上の新基地とみられているのであり、米軍新基地をつくるというような重大な件を内閣だけで決めることは妥当とはいえないのではないかとしました。
まずは立法機関である国会での審議が必要なのであり、そしてこれが事実上自治権の制約(周辺消防署の設置など)をもたらすのだから、住民投票という手続きが必要となると考えるべきであると指摘しました。
  福岡高裁判所那覇支部の今回の判決(県側への埋め立て中止への国の申立てを可とするもの) は、条約があるからということが重要な論処となっているが、そもそも条約は法律そのものではなく、立法府としての法律がないのに、このような論立ての判決文は妥当なのかと疑問を投げかけました。
以上のように、ホットな論点にも関わる問題についても冷静かつ理路整然とのべ、強い印象を与えていただきました。

国会報告(小西洋之参議院議員)
 参議院憲法審査会幹事でもある小西洋之参議院議員は、すでにマスコミでも論説等にとりあげられている「安部内閣は昭和47年見解の中に、その作成当時から、作成者たちの手によって限定的な集団的な自衛権を容認する法理が書き込まれている」としてきたが、そればまったくの虚偽であることが当時の内閣法制局長官吉國一郎氏はじめ、これを否定していたことで明らかとなったと述べ、「他国の防衛までをやるということは、どうしても憲法9条を、いかに読んでも読み切れない」としていました。
過去の政府見解を恣意的な読替え、法案を強行採決できるのであれば、それは、法治主義、立憲主義の否定、「壊憲」にほかならない。参院審査会で徹底追求したい、と意気軒昂な報告をいただきました。

■全国情勢報告(藤本泰成・戦争をさせない1000人委員会事務局次長)
 藤本泰成・戦争をさせない1000人委員会事務局次長は、少し前に「総がかり行動実行委員会」の福山力刧氏とともに活躍されています(平和フォーラムの共同代表でもある)。この憲法問題だけでなく、沖縄問題、いま日本が直面する「貧困と格差」教育と貧困の問題も運動課題にしています。

 それは、これらが憲法の基本理念、国民の平和と安全そして生存権の問題にも関わる基本課題であるからであり、広がる社会課題に共に果敢に取り組もうとよびかけました。

 今回の憲法講演会は、以上の要旨にもかいまみられるように、内容豊かで、多くの方が夜遅くまでの議論に熱心に耳を傾けていただきました。2015年6月28日、落合恵子さんを招いての県民集会以来の盛況であり、今後もこうし試み続けてゆければと考えています。

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